尊いと思った

辞めて行く人たち

去年の10月、福岡から東京にきてすぐにアルバイトを始めた。

もともとはデザインで仕事をもらったりコンペに参加したりしていたのだけれども、別にデザイナーになりたいわけでも無いし、「自分はまだフリーランスとして、独立してやって行くには未熟すぎる。」と実感したばっかりだったから基本からやり直そうと思ってアルバイトを始めていた。

 

アルバイトは、本気でやっている。「本気」というのは、簡単にいうと「一番働く」。「社員さんがやっている仕事を奪う」ために一番働いている。みんな嫌がるゴミ捨てだって、締め作業だって、掃除だって皿洗いだって、奪い取って、やる。

 

だからなのか、「え、やってくれんの?助かるぅ〜」なんて言って、社員さんと話す機会が多いし仲が良い。

 

これは自意識過剰かもしれないけれど、今のバイト先はそんな僕のことを気にかけてくれる人たちばかりだ。

「そんな彼らに限って会社を辞める」というのだから驚きだ。

 

毎回僕がシフトに入るたんびにちょっと贅沢なチョコレートをくれたあの人も、「頼りになる男」の代名詞だったあの人も、マネージャーも、

「偉いね〜いつも。」

「働くね〜!」

と声をかけてくれていた。

 

そんな彼らが今の職場を辞めて行くのがとても寂しい。

 

 

「辞める」ことに対するイメージ

みなさんは「辞める」ことに対してどういうイメージを持っていますか?

僕はいいイメージを持っていない。

 

辞めた途端に、今まで積み重ねてきたものが崩れる。

いまはそう考えている。

 

そう感じるのは、一度本気で大学をやめたくて勝手に休学して当時住んでいた家すらも勝手に解約して福岡に帰ったことがあるからだ。大学を辞めるというのは、これまで頑張ってきたこと全てを否定することに他ならない。いい高校に行ったことも、小学生の頃から塾に通っていた時間も、浪人して頑張った経験も、すべて否定することに他ならない。

 

もちろん、「新たなスタート」という側面もあるが、それは「いい面」しか見えていない。

 

新たなスタートと反比例して増大するのが「不安」だ。

積み重ねたものがなければないほど人は不安になる。

 

それを、僕は一回実感したから、なおさら「辞める」ことに対してマイナスイメージだ。

 

 

 

だけど、彼らは違った。

 

 

尊いと思った

さっきまで僕は、今のバイト先を辞めて行く方々のためにちょっと奮発して買った贈り物を届けに行き、話をしてきた。

 

今日の今日まで、知らなかったのだ。彼らが今の職場を辞めてその後何をするのか。

大人の世界は、裏でこっそり物事が進む。だから唐突なことが多い。みんなが一斉に辞めるのを知ったのは、つい数日前。

 

最初はめちゃくちゃビックリした。「私来週辞めるんだ。」とバイト終わりに聞いて、「実は後2回しかシフト入っていないんだ。」と営業時間前に聞いて、「明後日で辞めるよ。」と仕事中に聞いて。

いや、先に教えてくれよwwwと。

 

 

何も話を聞けなかったから、さっき会いに行ってきた。

話を聞きに行ったのは、内心「みんな大丈夫なのかな…どうなって行くんだろ…」と思ったのと、やっぱりみんながこれから何をするのかも気になったから。

 

でも、心配なんて無用も無用。みんな、前を向いていた。

 

「実はね…」

名刺をもらった。まさか、お店を経営しているなんて思わなかった。

 

 

「負けたくないやつがここにいるから、俺はそこで働く。」

誰よりも仕事に対して熱心だった理由がわかった。

 

 

 

すごい。

僕が大学を辞めたかった時なんて「逃げ」でしかなかった。わがままで、自分勝手で、自己中心的で。

けれど、彼らは辞める一方、裏で「立ち向かって」いた。積み重ねてきたものを、発揮する時だ。

 

 

その姿はとても尊いと思った。

 

 

 

そんな人になりたいなって思った。